不動産投資における経費と節税の関係性とは?鍵となる「減価償却」について知ろう

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「不動産投資に関する支出は全て経費になるの?」「不動産投資で節税できるって本当?」などと、経費・税金にまつわる疑問をお持ちの方もいるでしょう。

そこで今回は、不動産投資の経費について解説するとともに、経費を最大化して節税する上で欠かせない「減価償却」についてご紹介します。減価償却費の算出方法、そして減価償却を利用して節税を図る際の注意点もまとめているので、ぜひご参考にしてください。

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まずは押さえよう!不動産投資における経費について

「不動産投資は節税になる」とよく見聞きしますが、そのためにはまず「経費として認められる費用」と「経費として認められない費用」を理解する必要があります。

経費として認められる費用

経費として認められる費用には、たとえば以下のような支出が挙げられます。

仮に、経費として認められる支出を計上しなかったために税金を多く支払うことになっても、税務署から何らかの通知が届くことはありません。そのため、前もってどの支出が経費と認められるのか、押さえておくことが大切です。

不動産投資ローンの金利

保険料(火災・地震保険など)

物件の管理費

物件の修繕費

物件の管理委託費

入居者を募るためにかかる費用

(例:管理会社・仲介会社への広告宣伝費)

固定資産税をはじめとする税金

住民税・所得税・法人税を除く)

専門家への報酬

弁護士・税理士・司法書士など)

不動産投資に関わる旅費・交通費

不動産投資に関わる通信費

(例:PCやスマートフォンの購入費)

不動産投資に関わる自動車関連費用

反則金・罰金は除く)

勉強・情報収集のための費用

不動産投資に関わる交際費

(例:担当者と打ち合わせした際の飲食代)

物件(建物)部分の減価償却費

経費として認められない費用

経費として認められない費用には、たとえば以下のような支出が挙げられます。

身だしなみにかかる費用

(例:担当者と打ち合わせする際のスーツ代)

自動車関連費用

(例:反則金・罰金)

税金

(例:住民税・所得税・法人税)

資格を取得する上でかかる費用

不動産関連の資格も該当する)

トレーニングジムの会費

個人事業主を除き、家族以外の社員がいる場合は経費として計上できる場合がある)

「経費として計上できるから」と誤って認識していると、収益が悪化し自らを苦しめかねないため、必ず押さえておきましょう。

経費を最大化して節税!そのポイントとなる「減価償却」とは

不動産投資を通して節税を図るには、減価償却について理解を深める必要があります。

そもそも、不動産投資をはじめとする事業に用いられる建物(物件)は、時間の経過によってその価値が下がっていきます。このような特徴を持つ資産のことを「減価償却資産」といいます。
減価償却資産の取得に要したお金(=購入費)は、資産を取得したその年に全額計上するのではなく、その資産の使用可能期間にわたり分割して計上していくべきとされています。この考え方こそが「減価償却」であり、事業の毎年の利益を正確に把握する上では欠かせません。

例えば、1年間に7,000万円の利益をあげている企業が1.5億円の設備投資を行ったとします。この場合、もし1.5億円もの設備を購入したその年に購入費を全額計上すると、8,000万円の赤字になってしまいます。これでは最悪の場合、銀行からの融資が打ち切りになりかねません。
また、1年限りではなく、その後も継続的に使用する設備の購入費を一度で計上すると、毎年の利益を正しく把握することが困難になります。

こうした事態を防ぐために、事業に必要な“時間の経過とともに価値が下がる資産”の購入費は分割して計上する、減価償却を行う必要があるのです。

参照:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁

不動産投資における減価償却費はどう決まる?

減価償却費とは、減価償却によって計上される費用のことです。詳しくは後述しますが、不動産投資における減価償却費は「購入費」と「期間」によって決まります。

購入費には「物件価格」が該当します。土地の価格は購入費に含まれず、その理由には経年によって価値が下がらないことが関係しています。
期間には「減価償却期間」が該当し、これは法定耐用年数と築年数によって決まります。法定耐用年数とは、法的に定められている「物件を使用できる期間」のことです。

減価償却費が節税につながる理由

では、減価償却費はなぜ節税につながるのでしょうか。その理由には以下の2つが挙げられます。

1.減価償却費は支出を伴わない経費だから

上述のとおり、減価償却費は減価償却によって計上される費用ではありますが、実際の支出は伴いません。そのため、減価償却費を計上した場合、不動産投資で得た実際の利益に比べて、会計上の利益は少なくなりやすいのです。これにより、所得税・住民税の節税につながることから、減価償却費、すなわち不動産投資が節税になると考えられています。

2.損益通算で所得を圧縮できるから

所得の赤字と黒字を相殺する「損益通算」は、不動産投資においても可能です。

例えば、年収1,000万円のサラリーマンが、不動産投資の所得(手残り)として100万円を確保したものの、減価償却によって会計上は500万円の赤字になったとします。この場合、会計上の赤字である500万円と年収1,000万円を損益通算すると、最終的な所得は500万円になります。つまり、納税額が「年収が500万円の人」と同程度になるのです。

損益通算を行うと、このように「所得を圧縮して節税を実現すること」が可能になります。そのため、不動産投資は節税につながると考えられています。

【注意】税制改正によって以前より節税しづらくなっている

ここまで「減価償却(減価償却費)による不動産投資の節税」について解説しましたが、実は税制改正によって減価償却の方法が度々変更されていることから、以前より節税しづらくなっています。

平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産に関しては、「定額法」や「定率法」で減価償却を行います。このうち高い節税効果が期待できるのは定率法であり、これは「減価償却資産を購入した初期の段階に“多額の減価償却費”を計上できる」という方法です。

繰り返しになりますが、不動産投資では損益通算が可能なため、減価償却の定率法を通して会計上赤字にすることで節税を図ることができます。
また、減価償却費は実際に支出するわけではないので、定率法で早期に多額の減価償却費を計上できることは、減価償却資産を購入する際に要した資金を早めに回収できることにつながります。

しかし税制改正によって、平成10年4月1日以後に取得した減価償却資産の償却方法は「旧定額法」または「定額法」のみ、そして平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備および構築物の償却方法は「定額法」となりました。つまり、これらの時期に不動産投資を始め、さらに物件を購入した場合は、高い節税効果が期待できる定率法を使うことができないのです。

このように償却方法が限定的になったため、以前よりも不動産投資における節税対策がしづらくなったといえるでしょう。

参照:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁

減価償却費以外の経費は最小限に抑える

不動産投資による節税を実現するには、減価償却費以外の経費を最小限に抑えることが大切です。なぜなら、減価償却費以外の経費は支出を伴う上に、もし確定申告で所得税が還付されたとしてもそれ以上に出費がかさむと元も子もないからです。
不動産投資に関わる費用を経費として計上することは、税額を低くする上で大切なことですが、だからといって無理に出費を多くするのは避けるようにしましょう。

減価償却費はどう計算する?具体的な方法を押さえよう

では、減価償却費はどのように計算すれば良いのでしょうか。

結論からいうと、減価償却費は「物件価格 ÷ 減価償却期間」の計算式で算出します。物件価格には決め方が、減価償却期間には算出方法があるので、以下で詳しく解説します。

物件価格の決め方

物件価格の決め方は、大きく以下の2つに分けることができます。

不動産会社と話し合って決める

物件価格は、一般的に土地代も含めて「総額◯万円」と提示されます。そのため、物件を購入する際、総額に対する土地と物件の内訳が分からないこともあります。
ただし、土地と物件の比率は、常識の範囲内であれば当事者間(購入者と不動産会社)で決めることが可能です。つまり、物件価格を高くして、節税効果を引き上げることもできるのです。

とはいえ、もちろんそのためには不動産会社の承諾を得なければなりません。物件価格を高くすると、それに伴い売却時の消費税が多くかかることから、基本的に不動産会社は固定資産税評価額での按分を提案することがほとんどです。物件価格を高く設定することは容易ではないので、しっかり話し合いをして、常識の範囲内で土地と物件の比率を決めましょう。

固定資産税評価額の比率を踏まえて決める

当事者間で話し合いをしても、なかなか物件価格が決まらないときは、固定資産税評価額の比率を踏まえて決めることになります。この他、売買契約書に物件価格を書き忘れた場合も同様です。
固定資産税評価額をもとに考えると、比較的容易に物件価格を決めることができますが、価格が低くなりやすく、それに伴い節税効果も弱まる可能性があります。

なお、固定資産税評価額は、評価証明書や公課証明書で確認できます。

減価償却期間の算出方法

減価償却期間は、法定耐用年数と経過年数によって決まります。

物件が新築の場合は「法定耐用年数=減価償却期間」となります。法定耐用年数は物件の構造によって異なり、具体的には以下のとおりです。

物件の構造

法定耐用年数

鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造

47

れんが造・石造・ブロック造

38

金属造(骨格材の肉厚が4mmを超えるものに限る)

34

金属造(骨格材の肉厚が3mmを超え4mm以下のものに限る)

27

金属造(骨格材の肉厚が3mm以下のものに限る)

19

木造・合成樹脂造

22

木骨モルタル造

20

参照:昭和四十年大蔵省令第十五号 減価償却資産の耐用年数等に関する省令|e-GOV 法令検索

築年数が法定耐用年数を超えていないケース

物件の築年数が法定耐用年数を超えていない場合は、「(法定耐用年数 – 経過年数)+ 経過年数 × 20%」の計算式を使って減価償却期間を算出します。
例えば、築20年になる鉄骨鉄筋コンクリート造の物件を購入した場合は「(47-20)+20×20%」となるので、減価償却期間は31年になります。

築年数が法定耐用年数を超えているケース

物件の築年数が法定耐用年数を超えている場合は、「法定耐用年数 × 20%」の計算式を使って減価償却期間を算出します。
例えば、築30年になる金属造(骨格材の肉厚が3mmを超え4mm以下のものに限る)の物件を購入した場合は「27×20%」となるので、減価償却期間は5.4年になります。

減価償却費の計算をシミュレーションしてみよう

では、実際に以下のケースで減価償却費を計算してみましょう。

物件:築23年 鉄骨鉄筋コンクリート造

価格:7,000万円(土地:4,000万円、物件:3,000万円)

物件価格はすでに分かっているため、まずは減価償却期間を算出します。
鉄骨鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は47年であり、そのうちすでに23年は経過しているため、計算式には「(法定耐用年数 – 経過年数)+ 経過年数 × 20%」を用います。これに実際の数字を当てはめると「(47-23)+23×20%」になることから、減価償却期間は28.6年と分かります。

ここまで終えたら、減価償却費を求める計算式「物件価格 ÷ 減価償却期間」に数字を当てはめましょう。そうすると「3,000÷28.6」になるので、減価償却費は約104万円(※)と分かります。

※ 小数点第一位以降は切り捨てています。

確認しておこう!減価償却を利用して節税を図る際の注意点

最後に、減価償却を利用して節税を図る際の注意点をご紹介します。

デッドクロスが起こる可能性がある

不動産投資を行うにあたって、仮に元利均等返済で不動産投資ローンを組んだとします。この場合、毎月一定の返済額を支払わなければなりません。
一方で、定額法で減価償却を利用してたとしても、物件の築年数が法定耐用年数を過ぎれば減価償却費は0円となります。また、定率法の場合も年月を重ねるごとに減価償却費は減少していきます。

つまり、経費として認められない「ローンの元金返済額」が増えると、いずれ支出を伴わない減価償却費に追いつき、最終的には「元金返済額>減価償却費」となる場合があるのです。この状態のことを「デッドクロス」といいます。

デッドクロスになると、実際には手元に少額のお金しかないのに税務上は大きな黒字となり、課税所得額が高額になるという事態に陥ってしまいます。これでは、節税効果を得るどころか、不動産投資を成功させることも困難です。
そのため、減価償却を利用して節税を図る際は、デッドクロスに直面する可能性をあらかじめ理解しておくことが欠かせません。

物件を売却する際に譲渡税が発生する

上述したデッドクロスを回避するには、減価償却期間が終了する前に物件を売却するのが有効です。しかし、このときもし減価償却終了後であり、かつ物件の購入額と同じ金額で売却できた(=売却益ゼロ)としても、譲渡税がかかる可能性があります。なぜなら、「売却価格」と「物件の最終的な帳簿価額」の差額が売却益となり、そこに譲渡税がかかるからです。

減価償却終了後の物件価格は1円になります。そのため、物件の売却価格が例えば3,000万円だった場合は「3,000-1」となり、2,999万円が売却益と見なされます。つまり、この売却益に売却時期に応じた譲渡税率を掛け合わせた分の税金がかかるというわけです。

この点から、「減価償却終了後の物件の売却には譲渡税が発生する」ということも、不動産投資で節税を図る上で押さえておくべき注意点といえます。

まとめ

不動産投資に関する支出は基本的に経費として計上できます。ただし、中には経費として認められない支出もあるため、その点はあらかじめ押さえておくことが大切です。
不動産投資の経費について理解できたら、減価償却による節税の仕組みがより分かりやすくなります。今回ご紹介した内容を参考にしながら、計画的に不動産投資を行いましょう。

もし分からないことがあれば、お気軽に穴吹興産株式会社にご相談ください。

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